診療支援
診断

自己炎症性疾患
††
Autoinflammatory Disease
井田 弘明
(久留米大学教授・呼吸器・神経・膠原病内科)

診断のポイント

 自己炎症性疾患は現在30疾患以上報告され,各疾患で臨床症状と疾患遺伝子が異なることを念頭におくことが必要である。本項で取り上げる疾患名については表1に示した。膠原病疾患などの他の疾患と鑑別が必要な自己炎症性疾患は,FMF(図1)とTRAPSである。

【1】不明熱,周期熱。

【2】発熱の家族歴(孤発例あり)。

【3】発熱時の胸痛,腹痛,皮疹,関節痛,筋肉痛。

【4】診断的治療としてのコルヒチン投与(FMFの場合)。

【5】感染症,悪性腫瘍,膠原病疾患の否定が必要。

症候の診かた

【1】発熱:38℃以上が多く,期間はFMFでは半日から3日間,TRAPSでは平均2週間持続。

【2】胸痛:欧米に比較して少ないが,FMFで37.8%,TRAPSで13.6%,胸膜炎による胸痛。

【3】腹痛:欧米に比較して少ないが,FMFで65.8%,TRAPSで36.4%,FMFでは腹膜炎による激しい腹痛。

【4】関節痛:FMFで30.2%,TRAPSで59.1%。

【5】皮疹:疾患によって異なるが,発熱時に出現することが多い。TRAPSで54.5%。

検査所見とその読みかた

【1】発熱などの臨床症状があるときに炎症反応陽性。

【2】疾患特異的遺伝子の検査で変異を確認。

【3】検査で感染症,悪性腫瘍,膠原病疾患を否定。

確定診断の決め手

【1】特徴的な臨床症状と疾患遺伝子変異の存在。

【2】遺伝子多型が多く,遺伝子変異の解釈は専門家への相談が必要。

誤診しやすい疾患との鑑別ポイント

【1】膠原病:特にBehçet病成人発症Still病(),血管炎症候群()との鑑別が難しく,各疾患の臨床症状や特徴的な検査データを参考にする必要がある。

【2】周期性発熱症候群:最も頻度が高いと推察されているPFAPA症候群〔periodic fever(周期性発熱),aphthous stomatitis(アフタ性口内炎),pharyn

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