本項では,成虫が消化管に寄生するいくつかの条虫症と,幼虫が組織に寄生するマンソン孤虫症(マンソン裂頭条虫の幼虫寄生)について述べる。
診断のポイント
条虫類は種ごとに特有な生活環で維持されている。感染の背景を探る食歴・居住歴・旅行歴についての問診はきわめて重要で診断に直結する(表1図)。日本海裂頭条虫症・マンソン孤虫症・エキノコックス症(多包虫症)は日本国内で感染がみられるが,他の条虫症はほぼ外国からの輸入例と考えてよい。
【1】消化管に成虫が寄生する場合:感染者は無症状に経過することが多いが,肛門から自然排出された片節に気付いて,または片節が肛門から離脱する際の不快感で医院を訪れる。片節を調べることで,原因寄生虫が特定できる。検便も診断に欠かせない。また,自覚症状が全くなく,何かの折に条虫感染が偶然発見されることもある。
❶日本海裂頭条虫症
■肛門から“きしめん”に似た扁平な片節が垂れ下がる。