診断のポイント
【1】施設入所中またはデイサービスを利用している高齢者の夜間に増強する激しいかゆみ。
【2】ステロイド外用薬で加療中の患者が普段の皮疹と性質の異なる皮疹を呈するとき,あるいは同居家族のかゆみ。疥癬は忘れた頃にやってくる。
【3】手足の疥癬トンネルや男性の陰部結節,女性の乳房などに強いかゆみを伴う皮疹がある。
【4】小児でも全身の瘙痒と掌蹠に皮疹があり,結節を体幹にも認めるとき。
【5】全身に痂皮,掌蹠に著明な角化を伴う皮疹を呈する患者〔角化型(ノルウェーまたは痂皮型)疥癬〕。
緊急対応の判断基準
【1】院内に角化型疥癬が存在すると集団発生がありうる。かゆみの強い皮膚疾患の鑑別診断として常に意識しておく必要がある。
【2】角化型疥癬患者は免疫不全などの基礎疾患があることが多い。
【3】緊急対応が必要となるような重篤な皮疹の症例では,多数の虫体,虫卵が存在するので本症を疑えばKOH直接鏡検で迅速に診断可能である。原則個室管理が必要であり,感染コントロールの観点から全身に皮疹があり本症を鑑別とする症例を特に救急外来で診察した場合には入院適応の判断を慎重に行う。
症候の診かた
重症度で異なる。通常疥癬と,疥癬虫(ヒゼンダニSarcoptes scabiei var. hominis.)の数が多いために重症である角化型疥癬とは分けて考える。
【1】通常疥癬
❶疥癬トンネル(図1図)
■雌成虫の寄生部位の検出が必要であり,手,足,男性外陰部の順によくみられる。
■手指,指間,手掌,手首屈側をよく観察する。
■雌虫が角層に侵入しトンネルを掘り進んだ先端に向かって,V字形の引き波のような鱗屑を呈するwake sign(水尾徴候)が参考になる。
■虫体は三角形の黒点を探すと見つけやすい。水尾ごとピンセットで剝離し鏡検する。
❷臍部や四肢屈側部に散在する激しいかゆみを伴う紅斑性丘疹。
❸主に男性外陰部の小豆大赤褐