急性脳炎は大きく2つに分類される。一次性脳炎は種々の病原体の直接浸潤による脳組織の炎症に起因する症候群の総称である。一方,感染症後に免疫異常を介在して起こる脳炎(急性散在性脳脊髄炎など)は二次性脳炎に分類される。本項では一次性脳炎について記載する。
診断のポイント
【1】症状は発熱,中枢神経症状(意識障害,けいれん)である。
【2】ほぼ全例に脳波異常を認める。
【3】頭部MRI〔特に拡散強調画像(DWI)〕は急性期病変の検出感度が高い。
【4】髄液所見は単核球優位の細胞数増多,蛋白濃度上昇,糖正常である。
【5】病原体の同定が重要であり,検体を保存する。
緊急対応の判断基準
経過中にけいれん重積,呼吸障害が生じる可能性があり,本症が疑われれば全身管理のできる医療機関に転院することが望ましい。
症候の診かた
【1】発熱:感染症に伴うため,発熱が神経徴候に先行することが多い。
【2】頭蓋内圧亢進症状:頭痛,嘔吐を認めることもある。頭痛を訴えられない乳幼児では不機嫌,不活発,哺乳低下など非特異的な症状を認め,大泉門が膨隆する。
【3】意識障害:急速進行性で重篤な意識障害が多い。時に見当識障害,傾眠など軽度のこともある。けいれん重積あるいはけいれん治療薬の影響が意識障害の判定を困難にする場合があるので注意を要する。
【4】けいれん:単純ヘルペス脳炎や日本脳炎では高頻度に伴う。脳病変が限局する場合,全般化せずに局所的なけいれんが繰り返し認められることもある。
【5】その他の神経症候:ミオクローヌス,小脳失調,構音障害,麻痺,感覚異常など多彩な症候を認めうる。辺縁系に病変が存在する症例では,記憶障害や幻覚,情緒不安定などの精神症状を伴うことがある。
検査所見とその読みかた
【1】頭部画像検査(図1b図)
❶MRI:局所性の信号変化(左右非対称,限局性)を認め,DWIが急性期病変の検出感度が高い。
❷CT:脳浮腫所見が