診断のポイント
【1】乳児下痢症には急性と慢性があり,ほとんどが急性のウイルス性感染症による下痢である。
【2】便の性状,下痢の持続期間,血便の有無などが,急性か慢性か,ウイルス性か細菌性かなどの鑑別の参考となる。
【3】感染性下痢の流行状況を把握し,摂取食物の内容を聴取する。
【4】体重減少を含めた脱水,電解質異常などの評価は治療内容の選択に必要である。
【5】中等症から重症では便中病原微生物の有無の検査をする。
緊急対応の判断基準
【1】中等症~重症の脱水を認める場合には,経静脈輸液が可能な施設での管理が勧められる。
【2】神経症状を呈したり,腎不全などの重症な臓器障害が示唆される例は,集中治療が可能な施設に入院させる。
【3】2週間以上にわたる遷延する下痢,著しい体重減少や体重増加不良などが認められる場合には,消化管内視鏡検査を含む精査が可能な施設に紹介する。
症候の診かた
【1】下痢
❶乳児では病的な下痢でなくても,わずかな離乳食の違いや環境の変化で,便性が変わることも多く,元気で,機嫌もよく,哺乳量も通常通りであれば,発熱や血便などがないことを確認して数日間,自然経過をみる。
❷発熱,血性下痢,意識レベルの低下などあれば,精査,加療をする。
【2】嘔吐:乳幼児は種々の原因で嘔吐をしやすいが,ウイルス性胃腸炎では上部小腸に炎症を伴いやすく,細菌性腸炎よりも嘔吐症状を伴いやすい。
【3】便の性状
❶水様,血性,あるいは脂肪性下痢など,便性の確認は重要で,血性下痢はウイルス性より細菌性腸炎で認めることが多い。
❷特殊な下痢としては胆道閉鎖,胆道拡張症,ロタウイルス腸炎などの白色便にも注意する。
【4】脱水:乳児下痢症では脱水の評価は必要で,体重減少,易刺激性,眼窩陥凹,皮膚ツルゴールの低下,排尿回数,capillary refilling time(CRT)などで脱水の重症度を評価し,重症脱水が示唆されれ