診断のポイント
以下の特徴が挙げられる。
【1】遺伝性の稀少疾患である。
【2】新生児・小児のみならず成人期に発症することもある。
【3】代謝産物の異常により引き起こされる(代謝産物の蓄積,副産物の生成,最終産物の減少)。
【4】オルガネラ(細胞内小器官)の異常である。
【5】非特異的症状(哺乳不良,not doing well,嘔吐,筋痛,けいれん,意識障害など)で発症することが多い。
緊急対応の判断基準
代謝救急で対応すべき場合を示す。詳細は「新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2019」の代謝救急の項を参照。
【1】代謝性アシドーシス,高アンモニア血症などを呈した場合など:すみやかに対応(診断と治療)を進めていく必要がある。
❶高アンモニア血症+代謝性アシドーシス
■pH<7.2
■アニオンギャップ>20mEq/L,
■アンモニア:新生児>250μg/dL(150μmol/L),乳児期以降>170μg/dL(100μmol/L)
❷アシドーシスのない高アンモニア血症:アンモニア400μg/dL(220μmol/L)以上のことが多い)。
【2】血中アンモニア値が>850μg/dL(>500μmol/L)の場合や,アンモニア値にかかわらず意識障害が強い場合,内科的治療を2~3時間行ってもアンモニア値があまり低下しない場合:緊急で血液浄化療法を行う必要がある。
症候の診かた
以下に挙げるようなものがある場合には,先天代謝異常症を疑って検索を進めていく必要がある。
【1】感染症や絶食後の急激な全身状態の悪化
【2】特異的顔貌・皮膚所見・体臭・尿臭
【3】代謝性アシドーシスに伴う多呼吸,呼吸障害
【4】成長障害や知的障害
【5】心筋症
【6】肝脾腫(脾腫のない肝腫大,門脈圧亢進所見のない脾腫)
【7】関連性の乏しい多臓器にまたがる症状の存在
【8】特異な画像所見
【9】先天代謝異常症の家族歴
【10】死因不明の
関連リンク
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