診断のポイント
【1】基礎疾患:小児IE例の約90%が先天性心疾患を有する。残りの10%前後には既往歴の全くない例から,中心静脈カテーテル留置などの医原性合併症例も含まれる。
【2】基礎心疾患別の分類:IEの1)高度リスク群,2)中等度リスク群,3)低リスク群に分類される(表1図)。
【3】修正Duke診断基準〔「感染性心内膜炎」項(→)の表1図を参照〕:小児のIEでも有用性が確認されており,診断の感度は70%を超えるが,病初期には心エコー図で明瞭な所見が得られないことがある。
【4】IEのリスクとなる心疾患を有する患者で説明のつかない発熱が続く場合には,鑑別診断の1つとしてIEを疑うことが重要である。適切な診断・治療がなされない場合,致命的となる。
症候の診かた
症候は,敗血症に伴う感染症状と弁の破壊などによる心症状,疣腫の遊離による塞栓症,宿主の免疫反応からなる。
【1】発熱
❶修正Duke診断基準の小基準として38℃以上の発熱が挙げられているが,小児では38℃に達しない微熱であることも多い。
❷経口抗菌薬を投与されて解熱し,中止によって発熱することを繰り返している場合もある。
【2】心雑音:新たに出現した弁逆流による心雑音を聴取することがあるが,既存の先天性心疾患による心雑音との鑑別が必要である。
【3】心不全と不整脈
❶大動脈弁や僧帽弁の逆流による左心不全,肺動脈弁や三尖弁の逆流による右心不全は予後不良の因子である。
❷病変が伝導系に及びブロックなどの不整脈を発症することがある。
【4】塞栓症
❶疣腫が右心系にある場合は肺塞栓症を,左心系にある場合は全身の塞栓症を起こす。右心系の疣腫でも右左短絡を有する例では全身の塞栓症を起こしうる。年長児で胸痛を訴える場合,肺塞栓の症状である可能性がある。
❷脳梗塞や梗塞後出血により頭痛,嘔吐,けいれん,意識障害,麻痺などがみられる。感染性動脈瘤破裂による頭蓋
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