診療支援
治療

うつ病(DSM-5)/大うつ病
Major depression
井上 猛
(東京医科大学主任教授・精神医学分野)
高江洲義和
(東京医科大学講師・精神医学分野)

◆疾患概念

【定義・病型】

 うつ病(DSM-5)/大うつ病(以下うつ病)とは①抑うつ気分,②興味関心の低下,③睡眠障害,④食欲不振か過食,⑤精神運動性の抑制か焦燥,⑥易疲労性・気力減退,⑦思考力・集中力の減退,⑧無価値感,⑨自殺念慮などの多彩な心身の症状が,一日中,ほぼ毎日,少なくとも2週間以上持続する精神疾患である.以上はDSM-5のうつ病の9項目の診断基準であるが,その他何らかの身体症状はほぼ必発であり,性欲・物欲などの欲動の減退もほとんどの患者に認められる.不安,絶望感,心気症状も多くの患者で認められる.典型的には上記の症状がほぼ出そろうが,すべての症状が認められない場合でも,5項目以上(ただし①か②が必須)が当てはまればうつ病と診断する.従来の内因性病像が前景に立つ場合には,DSM-5ではメランコリー型うつ病,ICD-10では身体性症候群とよび,喜びの消失,快適な刺激に対する反応の消失,日内変動,早朝覚醒が認められ,食欲不振・抑うつ気分・罪責感・抑制あるいは焦燥が顕著となる.重症度が高くなると,病識が不確かとなり,なくなることもある.

 過眠,過食,鉛様麻痺,気分反応性,対人関係で拒絶されることへの敏感さがみられる場合は非定型うつ病という.精神症状が顕著となり,心気妄想,貧困妄想,罪責妄想が認められる場合は精神病性うつ病という.DSM-5では,「気分に一致する/しない精神病性の特徴を伴う」という特定用語を充てる.精神病性うつ病では幻視はまれであるが,断片的な幻聴,体感幻覚はみられることがある.重症となり抑制が強くなると昏迷となる.DSM-5では,特定用語「緊張病を伴う」に該当するかを判断する.これらの亜型については本章の他の項目で診断・治療について詳述される.

 上記の定義から明らかなように,ときどき状況に反応して憂うつ,意欲低下となる場合はうつ病という診断にはならない.

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