診療支援
治療

児童・青年期の不安症・強迫症・心的外傷後ストレス障害
anxiety disorders, obsessive-compulsive disorder and posttraumatic stress disorder in children and adolescents
宮崎哲治
(川崎医科大学講師・精神科学)
青木省三
(川崎医科大学主任教授・精神科学)

◆疾患概念

【定義・病型】

 不安とは漠然とした対象のないおそれのことをいい,特定の対象に向けられた不安を恐怖という.不安や恐怖を主症状とする精神疾患が不安症である.成人とは違い子どもの場合は,不安や恐怖を言葉で上手に表現できないため,不安症状は身体症状や行動上の問題など未分化な形で現れることがある.身体症状としては,心悸亢進,胸内苦悶,呼吸困難感,咽頭閉塞感,口渇,上腹部不快感,腹痛,四肢のしびれ,発汗,のぼせ,ふらつき,めまい感,振戦,頻尿,頭痛などがあり,行動上の問題としては,落ち着きのない行動,泣く,かんしゃくを起こす,立ちすくむ,家庭内暴力,ひきこもり,不登校などがある.また,不安症が二次的な抑うつ気分の原因になることもある.子どもの不安と恐怖は年齢によって変化するため,これらの評価に際しては発達的な背景も考慮に入れなければならない.DSM-5では,不安症群のなかに,分離不安症,選択性緘黙,限局性恐怖症,社交不安症,パニック症,広場恐怖症,全般不安症,物質・医薬品誘発性不安症,他の医学的疾患による不安症,他の特定される不安症,特定不能の不安症がある.DSM-Ⅳでは,強迫性障害と心的外傷後ストレス障害(PTSD)は不安障害に分類されていた.しかしながら,DSM-5では,強迫症は強迫症および関連症群に,PTSDは心的外傷およびストレス因関連障害群に分類されている.以下,パニック症,限局性恐怖症,社交不安症,全般不安症,強迫症,PTSDを中心に述べる.

【病態・病因】

 基本的には成人例と同じである.

【疫学】

 子どもの約10-15%が小児期に不安症を経験し,不安症は子どもの精神障害のなかで行動障害の次に多い.パニック症は通常若年成人期に発症することが多く,児童期の発症も報告されているが,前思春期でのパニック症の発症はまれである.12-18歳でのパニック症の有病率は1.1%との報

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?