診療支援
治療

パーキンソン病
Parkinson disease (PD)
玉岡 晃
(筑波大学大学院教授・神経内科学)

◆疾患概念

【定義】

 パーキンソン病(PD)は,安静時振戦,筋強剛,無動・寡動,姿勢反射障害といった特徴的な運動症状を認める神経変性疾患である.

【病態】

 PDの主たる病態は中脳黒質緻密層におけるドパミン作動性神経細胞が変性・脱落することである.PDで障害される神経細胞の組織学的変化として,レビー小体の形成が認められている.レビー小体は中枢および末梢の神経細胞に出現する円形・好酸性のコアと周囲のハローからなる細胞質封入体であり,主要構成成分はα-シヌクレインである.α-シヌクレインは家族性PDの原因遺伝子の1つであるほか,その発現レベルとPD発症との間に相関が認められている.

【疫学】

 PDの有病率は比較的高く,日本国内で人口10万人当たり約150人であると推定されている.また,年間の新規発症は10万人当たり10-15人である.発症年齢は50-70歳に多く,高齢になるほど有病率が高くなる.

【経過・予後】

 PD自体は進行性の疾患で,適切な治療介入がされれば通常,発症後10年程度は普通の生活が可能である.それ以降は個人差があるが,平均余命は一般より2-3年短い程度といわれている.長期罹患患者では嚥下性肺炎をきたしやすく,生命予後に影響する.

◆診断のポイント

A.臨床症状

 PDの症状は運動症状と非運動症状に大別される.

1.運動症状

 安静時振戦,筋強剛,無動・寡動,姿勢反射障害の4主徴に加え,歩行などの自動的な動作が障害される.安静時振戦は,軽微な場合は暗算などの精神的負荷により初めて出現する.初発症状として一側に出現することが多い.筋強剛は手関節などの歯車様筋強剛が特徴的であり,軽微な場合は,対側の上肢に運動を負荷することにより誘発できる.無動・寡動は動作緩慢ともいわれ,起立時や寝返りなどの体位変換動作時に顕在化しやすい.これに関連した症状としては,仮面様顔貌,小声,小書症,小刻み歩行な

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?