診療支援
治療

多系統萎縮症
multiple system atrophy (MSA)
青木正志
(東北大学大学院教授・神経内科学)

◆疾患概念

【定義・病型】

 多系統萎縮症(MSA)とは,いくつかの疾患の総称であり,これまでに①オリーブ橋小脳萎縮症,②線条体黒質変性症,③シャイ-ドレーガー症候群などに分類されてきた疾患群である.病理学的には,特徴的なオリゴデンドロサイト内嗜銀性封入体が観察されることから,同一の疾患であることが判明した.したがって,小脳症状が目立つタイプは小脳型(MSA-C),パーキンソン症状が目立つタイプはパーキンソニズム型(MSA-P)と分類するようになってきた.これまでは厚生労働省特定疾患治療研究事業の対象疾患であったが,平成27(2015)年からは難病新法に基づいた指定難病に認定された.それに伴い,診断基準および認定基準が更新されている.

A.オリーブ橋小脳萎縮症

 中年以降に発症し,初発・早期症状として小脳性運動失調が前景に現れる.経過とともにパーキンソニズム,自律神経症状(排尿障害や起立性低血圧など)を呈することが多い.MRIで,小脳,脳幹部(橋)の萎縮を比較的早期から認める.またT2強調画像にて橋中部に十字サインが認められる.

B.線条体黒質変性症

 中年以降に発症し,パーキンソン病様の症状で発症し,振戦よりは筋固縮,無動が目立つ.抗パーキンソン病薬に対する反応は不良であるが,数年間にわたって有効な例もある.経過とともに自律神経症候や運動失調が加わってくる.MRIにて,橋および小脳の萎縮,線条体の萎縮,被殻外側のスリット状のT2高信号域などが診断の補助となる.パーキンソン病との鑑別にはMIBG心筋シンチグラフィが有用である.

C.シャイ-ドレーガー症候群

 中年以降に発症し,起立性低血圧,排尿障害を中心とした自律神経症状が前景となる.発症後1年間にわたり上記の自律神経症状が前景であった場合に,シャイ-ドレーガー症候群と分類する.

【病態・病因】

 病態は明らかではないが,病理学的には特徴的な

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