診療支援
治療

睡眠覚醒障害の基本的な治療姿勢
treatment of sleep-wake disorders
田ヶ谷浩邦
(北里大学医療衛生学部教授・健康科学科)

 睡眠と関連した訴えは多彩であり,さまざまな疾患・状態で同一の訴えがみられるため,患者の訴えだけでは診断・治療方針を決定することが困難である.詳細に問診・診察・一般検査を行い,必要なら睡眠障害専門医療機関に検査を依頼する.

 不眠の訴えは,さまざまな原因による.睡眠薬など眠気を引き起こす薬剤を投与すると,かえって悪化する場合,思わぬ有害事象を引き起こす場合,効果が得られない場合が含まれている.睡眠薬多剤投与の原因は,睡眠薬が無効な不眠への睡眠薬投与や,睡眠薬の作用を減弱させるような服薬法・習慣であることが多い.

 薬物療法開始・薬剤追加の前に,睡眠習慣を含めた十分な問診と鑑別を行うことが重要である.

A.問診の重要性

 睡眠障害の原因・病態は多彩で,①閉塞性睡眠時無呼吸症候群obstructive sleep apnea syndrome(OSAS)など,専門的治療を行わないと医学的にも社会的にも重大な問題を引き起こす場合,②レストレスレッグス症候群restless legs syndrome(RLS),概日リズム睡眠障害など,睡眠薬は効果が乏しく,増量により有害事象を引き起こす場合,③生理的に眠れるはずのない状況で眠ろうとしている場合,などが含まれている.多くの項目を漏れなく問診するためにはチェックリスト(表1)の利用が有効である.

 まず,どのような睡眠の問題であるのかを明らかにする.不眠(布団の中で眠れず目覚めていることが苦痛,あるいは,睡眠をとっても休息がとれない)なのか,逆に過眠(覚醒していなければいけないのに居眠りをしてしまう)や,朝の覚醒困難,昼夜逆転なのか,睡眠に伴う異常現象(いびきや呼吸停止,下肢や上肢の異常感覚・不随意運動,睡眠中の異常行動など)なのかを確認する.これらは,複数併存していることがある.

 睡眠中の異常現象について本人が自覚していない場合や,実際は眠

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?