診療支援
治療

神経疾患による睡眠障害
sleep disorder in neurological diseases
平田幸一
(獨協医科大学教授・内科(神経)講座)

◆疾患概念

【定義・病型】

 神経疾患でも睡眠障害合併率はかなり高い.神経疾患での睡眠障害は,かつてはその病態との関連は密接なものでなく,筋力低下などの結果としての睡眠呼吸障害や,難治性疾患に罹患したための抑うつによる精神性不眠が主体と考えられていた時期もあったが,実際にはその病態生理自体が睡眠障害を呈している場合がしばしばみられることが判明してきつつある.すなわち神経疾患の睡眠障害を診ることは,その病態解明,新たな補助診断,将来的な治療法の開発に重要な示唆を与えるものと思われる.一方,多くの原発性不眠症患者や精神疾患患者が,深刻な不眠や過眠を愁訴の中核とすることが多いのに比べ,概して神経疾患では睡眠障害の訴え自体は乏しく,それがまた,神経障害における睡眠障害が今まで注目を浴びなかった理由であるとも考えられる.

【病態・病因】

 神経疾患のうち変性疾患では,進行とともに,睡眠を直接制御する脳神経核や神経伝達物質の量が減少する.それに伴い,睡眠構築の崩壊,そして不眠・過眠が生じる.したがって,前述したように,心理的な要因や療養に伴う睡眠衛生の問題だけでなく睡眠障害が生じる.また,神経症状自体が睡眠妨害因子となっている場合,すなわち先に述べた,筋ジストロフィーなどによる筋力低下などの結果としての睡眠呼吸障害やパーキンソン病での無動による寝返りの障害,夜間ジストニアや早朝の痛みなどもしばしば起こりうる.

 パーキンソン病の10%以上に合併するレストレスレッグス(むずむず脚)症候群や睡眠時無呼吸症候群など二次性の睡眠障害の病態が併存する場合がある.パーキンソン病では二次性過眠症状,特に突発性睡眠といわれるものが特徴的であり,頻度も高い.その眠気の性状は,ナルコレプシーに似た断続的な居眠りのパターンを示すものが多いが,必ずしもナルコレプシーのようなレム関連症状を呈するわけではない.その病因とし

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