◆疾患概念
【定義・病型】
DSM-5あるいはICD-10により規定される精神疾患に伴って出現する不眠や過眠などの睡眠障害である.精神疾患に伴う不眠は,国際標準分類のICSD-2(睡眠障害国際分類第2版)では睡眠障害の鑑別を行う際に出合うことが多い一群として付録Bに掲載されており,気分障害,不安障害,身体表現性障害,統合失調症とその他の精神病性障害,幼児期・小児期または青年期に診断される障害,パーソナリティ障害に細分化されている.
【疫学・病態】
睡眠障害はほとんどの精神障害で生じるが,逆に不眠を訴える者の40%と過眠を訴える者の46.5%がDSMの何らかの精神疾患の基準を満たすなど,両者はきわめて深いつながりの中にある.
病因は疾患により異なるが,種々のストレスや抑うつ,不安・緊張,精神運動興奮などの情動などが,視床下部-下垂体-副腎皮質系hypothalamo-pituitary-adrenal axis(HPA-axis)の活動亢進などを介して脳に過覚醒状態をもたらすことが,多くの不眠の下地になる.以下に,特に不眠の頻度が高い,気分障害,統合失調症,不安障害に伴う不眠について概説する.
A.気分障害
うつ病の随伴症状として不眠は最も多く,患者の80-85%に認められる.入眠障害(73.3%),熟眠障害(89.9%),早朝覚醒(47.7%)などあらゆる型の不眠がみられるが,特に早朝覚醒は内因性のうつ病に比較的特徴的である.睡眠ポリグラフでは,これらの臨床症状を裏づける所見が観察されるほか,レム潜時の短縮,レム密度の増加,特に第1睡眠サイクルの徐波睡眠の低下を認める.これらの所見は,うつ病者におけるコリン作動系神経伝達の増強かあるいはアミン作動系神経伝達の減弱を反映していると予測されている.また一般には夜間睡眠の後半に多く出現するレム睡眠が,うつ病患者では前半に多く出現し,これ
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