診療支援
治療

腎・泌尿器疾患合併症
urological complication
本田真理子
(東京慈恵会医科大学・泌尿器科)

Ⅰ.尿閉

◆疾患概念

 尿閉urinary retentionは尿が膀胱に充満しているが排出できない状態である.原因はさまざまであるが,精神科領域では向精神薬(特にフェノチアジン系抗精神病薬,三環系抗うつ薬)による薬剤性の頻度が高い.また精神疾患患者に多い重度の便秘も尿閉のリスクとなる.

◆診断のポイント

 尿量減少,下腹部膨満,腹痛.残尿過多に起因する頻尿が先行することもある.腹部エコーで膀胱充満を確認することで,無尿との鑑別が可能である.腹部エコーが施行できない場合は,導尿により診断的治療を行う.

◆治療方針

A.導尿

・長期間の留置目的:バルーンカテーテル14-20F

・一時的な導尿目的:ネラトンカテーテル6-12F

 挿入できない場合は尿道損傷のリスクがあるため,無理をせず泌尿器科医にコンサルトする.

B.前立腺肥大の治療

 男性患者に多い前立腺肥大が尿閉のベースとなる場合は,前立腺肥大の治療を行う.

[処方例]

以下1)-3)のいずれかを用いる.血圧低下に注意する.


1) ハルナールD錠(0.2mg) 1回1錠 1日1回

2) フリバスOD錠(25・50・75mg) 1回25-75mg 1日1回

3) ユリーフ錠(4mg) 1回1錠 1日2回


C.向精神薬調整

 減量や中止(特に抗コリン作用が強い三環系抗うつ薬,フェノチアジン系抗精神病薬,ノルアドレナリン再取り込み阻害作用の強いSNRIなど)もしくは他剤への変更を行う.それでも改善がない場合,以下を処方する.

[処方例]


ウブレチド錠(5mg) 1回1錠 1日1回


 コリン作動性クリーゼ(筋力低下,呼吸不全,発汗,下痢,コリンエステラーゼ低下,縮瞳)に注意する.クリーゼ出現時は硫酸アトロピン注(0.5mg/アンプル)を症状改善まで静注.呼吸不全には人工呼吸管理とする.このため精神科病院で発生した場合は内科医もしくは救急科医のいる病院への搬送が必

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