●病態
・失神とは,一過性の意識消失のため姿勢を保持できなくなり,その後完全に自己回復する状態と定義され,表1図のようにさまざまな原因で失神を起こしうるが,共通する病態生理としては脳全体の一過性低灌流によるものと考えられている.
・てんかんや低血糖などの意識消失は脳全体の低灌流を伴わないとされ,厳密な失神の定義に含めないという考えもあるが,臨床では失神の鑑別として重要である.
・失神の原因として最も多いものは,起立性調節障害であるが,頻度は高くないものの循環器疾患など生命の危険にかかわる原因もある.
●治療方針
失神の治療は原因に対する特異的な治療介入を行わないと根本的な解決には至らない.しかし,失神の原因は多岐にわたり原因特定に時間を要する可能性もある.原因のなかでショックを起こしたり心肺停止に移行する可能性のある疾患の場合には,緊急の対応が必要である.まずは呼吸と循環が安定していることが大前提