治療のポイント
・呼吸困難には呼吸窮迫と呼吸不全の病態があり,呼吸不全ではすみやかに適切な対応をしないと心停止に至ることもある.
・呼吸困難時の対応三大原則は,酸素投与,モニター装着,人員確保(情報共有)である.
・呼吸不全と判断すれば,躊躇なく100%酸素によるバッグマスク換気で呼吸補助を行う.
・呼吸障害の評価を行い,上気道障害,下気道障害,肺組織障害,呼吸調節障害に分類し,初期治療とともに病態に応じた介入をする.
・呼吸困難の重症例では,診断を待たずして,初期治療を行う必要がある.
●病態
・呼吸困難とは呼吸に際して生じる不快感であり,異常な呼吸数や呼吸努力を示す病態である.小児は本人からの訴えが困難であり,他覚所見から呼吸窮迫と呼吸不全の状態を区別することが重要である.
・一般に,呼吸困難にもかかわらず,十分なガス交換を維持しようと頑張っている状態が呼吸窮迫で,維持でなくなった状態が呼吸不全である(表1図)
・小児の評価は,意識レベル,呼吸,皮膚色を第一印象として数秒で把握するとともに,呼吸の評価は,呼吸パターン,呼吸努力の有無,呼吸音の状態,低酸素の有無である.呼吸の評価は聴診器やパルスオキシメーターなどだけでなく,視診による呼吸様式の評価も重要である.
A.呼吸パターン
・呼吸数の異常や不規則呼吸がある.
・年齢によらず,極端な呼吸数の低下(10回/分以下)や増加(60回/分)は危機的状態である.
B.呼吸努力
・気流抵抗の増加や肺のコンプライアンスの低下に対して換気や酸素化を維持しようとして頑張っている状態であり,普段の呼吸で使用しない呼吸補助筋を使う状態である.
・鼻翼呼吸,陥没呼吸,呼気の延長,頭部の上下首振り,シーソー呼吸,呻吟として認知される.
・陥没呼吸は軽度であれば,肋骨下,胸骨下あるいは肋骨間にみられ,重度になれば鎖骨下,胸骨下,胸骨に陥没が認識される.
C.呼吸音
・いびき音,声