診療支援
治療

薬物中毒
drug poisoning/overdose
宮本 和
(埼玉医科大学総合医療センター小児救急救命センター)

●病態

・日本中毒情報センターへの年間問い合わせの8割は5歳以下の小児であり,そのほとんどは家庭内で起きた事故である.

・一方,思春期は自殺企図による薬物中毒がみられるため身体的治療はもちろんのこと,本人や家族の精神的ケアに加え,家庭や学校といった社会的な調整も必要となる.

●治療方針

A.患者評価

 治療の基本は呼吸管理,循環管理(不整脈,ショック),中枢神経管理(意識障害,けいれん),体温管理(高体温,低体温)といった全身管理である.それと並行して原因薬物の排除(吸収の阻害,排泄の促進)を行い,特異的な拮抗薬や解毒薬があればすみやかに投与する.そのためにはTriageDOAなどの中毒スクリーニングキッド使用や空包などから可能な限り情報を収集し,原因物質を特定する.「いつ,どこで,何を,どのくらい,どのように摂取したか」といった詳細な問診を行う.

 気道閉塞,誤嚥や化学性肺炎,意識障害によって呼吸不全をきたしている場合はすみやかに気道確保を行う.また,胃洗浄の際にも誤嚥予防目的の気管挿管をためらわない.けいれんに対してはジアゼパム,ミダゾラム,フェノバルビタールなどが選択肢となる.テオフィリン中毒にはフェニトインは無効とされ,三環系抗うつ薬中毒ではフェニトイン使用により致死的不整脈の発生報告があるので注意を要する.

B.治療

1.未吸着薬物の排除

 消化管からの中毒物質の吸収を妨げる目的で行われるが,ルーチンでの施行は推奨されない.効果は摂取から洗浄までの時間,摂取した量,吸収速度や腸蠕動などに影響される.米国では胃洗浄よりも迅速な活性炭投与を勧めている.活性炭のみの迅速投与と胃洗浄後の活性炭投与は効果の差がないとされている.

a.胃洗浄 意識障害や誤嚥の可能性がある場合は,事前に気管挿管で確実な気道確保を行う.胃洗浄時は左側臥位にし,胃内要物が腸内に押し込まれないよう配慮する.

 適応として

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