●病態
・低出生体重児や外科的治療を有する児を除けば,新生児期の重症細菌感染症の多くは母児感染による敗血症および髄膜炎である.肺炎,尿路感染症,皮膚感染症,壊死性腸炎,骨髄炎,関節炎などの局所感染が,敗血症に合併している場合もある.
・母体からの垂直感染が主な早発型敗血症の代表的な起因菌は,B群溶血性レンサ球菌(GBS),大腸菌,リステリア菌である.この3菌種に加えて遅発型敗血症の起因菌としては,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を含む黄色ブドウ球菌,腸球菌,表皮ブドウ球菌,緑膿菌やインフルエンザ桿菌などのグラム陰性菌があげられる.
・発熱以外にも,呼吸障害,無呼吸,活気不良や哺乳力低下,不安定な体温,腹部膨満や嘔吐など,他疾患との鑑別を要する症状で発症する場合もある.急激に全身状態が不良となるおそれがあるため早期に診断および治療を開始する必要があるが,同時に新生児期に全身状態が不良となる疾患である循環器疾患,内分泌疾患,代謝異常,単純ヘルペスウイルス感染症,血球貪食症候群や脳炎・脳症を呈するウイルス感染症との鑑別も行う.
●治療方針
すでに全身状態が不良であるか,そうでなくても急激に状態が悪化するおそれがあるため,治療を先行しながら確定診断に必要な検査を行う.第一に,バイタルサインを評価して呼吸心拍監視を行い,必要に応じて呼吸循環管理を開始する.
次に,診断に必要な血液検体を採取して輸液療法を開始する.頭蓋骨が癒合していない新生児であるため,頭部画像検索前に腰椎穿刺を可能な限り行い,髄液検体を採取して髄膜炎の有無を診断する.
A.薬物療法
1.抗菌薬
敗血症を疑った時点で抗菌薬を用いた経験的治療を開始する.
Px処方例 下記➊と➋または➌を,髄膜炎が否定できないなら➊と➍を用いる.
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