診療支援
治療

高乳酸・ピルビン酸血症
lactic and pyruvic acidemia
古賀靖敏
(久留米大学小児科学・教授)

●病態

・高乳酸・高ピルビン酸血症は,肝型糖原病などの一部の疾患を除き,ミトコンドリア病や有機酸血症などの遺伝的代謝疾患のほか,溺水,危急疾患時にみられることが多く,緊急的処置が必要なことが多い.

・基礎疾患にかかわらず,L/P比が25.6を超えた場合,重要臓器の細胞死をきたすことが知られており,この病態を早急に改善する必要がある.

●治療方針

A.発作時

1.心不全・腎不全がない場合

Px処方例

ビカーボン注 ビカーボン500mLに50%ブドウ糖20mL1Aを混ぜ,初回50mL/kgを6時間程度かけて点滴静注 その後,血液ガスをモニターしながら,維持輸液量として継続

 ビカーボンはNa135mEq/L,HCO3-25mEq/Lと細胞外液の組成に近く,代謝性アシドーシス発作時に合併しやすい低Na血症の補正と代謝性アシドーシスの補正に,ミトコンドリア異常症の救急治療で最も有用な輸液製剤と考えられる.

2.MELAS(ミトコンドリア脳筋症)における脳卒中様発作の場合

Px処方例

アルギU注 1回5mL/kg 1時間かけて静注(発作発現から3時間以内に投与)

 この治療は日本医師会治験促進センターの医師主導治験として2年間の治験が終了後,7年間の長期フォローアップにより患者の延命が可能となった.

B.予防時

1.MELASにおける脳卒中様発作の予防

Px処方例

アルギU配合顆粒 1日0.3~0.5g/kg(製剤量として) 1日3回に分けて(毎食後)

 血管内皮機能改善薬として使用する.トラフ値として血漿中アルギニン濃度168μmol/L以上を設定する.

2.ミトコンドリア異常症におけるcytopathyの予防

Px処方例

ピルビン酸ナトリウム(工業用試薬) 1日0.5g/kg 1日3回に分けて(毎食後)

 この化合物は,ジクロロ酢酸(DCA)同様,ピルビン酸脱水素酵素複合体(PDHC)を最大限に活性化させる働きの

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