診療支援
治療

Wilson病
Wilson disease
井原健二
(大分大学小児科学・教授)

●病態

・Wilson(ウィルソン)病は,ATPB遺伝子異常による常染色体劣性遺伝病である.

・ATPBは肝細胞内の銅を胆汁中に分泌させ,また銅運搬体のセルロプラスミンの合成に関与する.この機能が欠損すると肝臓,大脳基底核,角膜,腎臓などに過剰の銅が沈着し臓器障害をきたす.また血中遊離銅は溶血を起こす.

●治療方針

 銅過剰予防として銅の摂取量の制限,臓器に過剰に沈着した銅の除去,ならびに末期臓器(肝臓)障害に対する血液浄化療法と臓器移植である.

A.栄養療法

 銅の摂取を制限する必要がある.銅含有量の多い食品を制限する食事指導を行う.

B.薬物療法

 銅キレート剤による銅排出促進と,亜鉛製剤による銅吸収抑制に大別される.

 病型や重症度によらず,第1選択薬は酢酸亜鉛製剤の単独治療もしくは塩酸トリエンチンとの併用療法が主流である.重症型の場合には,第2選択として酢酸亜鉛製剤+D-ペニシラミンなどがある.未発症例は酢酸亜鉛単剤療法である.

1.銅キレート剤

a.D-ペニシラミン(メタルカプターゼ) 除銅効果が強く,古くから治療に用いられている.有害事象の合併や中枢神経症状増悪の副作用のため,最近は第2選択薬とすることが多い.

Px処方例

メタルカプターゼカプセル(50・100・200mg) 1日20~25mg/kg(初期治療),1日10~15mg/kg(維持期)(最大1日量1,000mg) 1日2~3回に分けて 食前1時間以上または食後2時間以上あけて

b.トリエンチン塩酸塩(メタライト250) 蓄積した体内銅を緩徐に排泄させる薬剤だが副作用が少ないため,「Wilson病診療ガイドライン2015詳細版」上でもD-ペニシラミンよりも優先される.

Px処方例

メタライトカプセル(250mg) 1日40~50mg/kg(初期治療),25~30mg/kg(維持期)(最大1日量2,500mg) 1日2~3回に分け

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