診療支援
治療

副甲状腺機能低下症
hypoparathyroidism
佐野伸一朗
(静岡県立こども病院内分泌代謝科)

●病態

・副甲状腺機能低下症は,副甲状腺ホルモン(PTH)の作用低下により,低カルシウム(Ca)血症,高リン(P)血症をきたす疾患である.本疾患は,PTH分泌低下およびPTH抵抗性に大別される.通常,低Ca血症時,PTH分泌不全であればPTH低値を呈し,PTH抵抗性ではPTH高値となる.成人では術後の副甲状腺機能低下症が多いが,小児では副甲状腺の発生や機能に関与する遺伝子異常に起因するものが多い.

・PTH分泌低下,分泌閾値の低下(PTH低値):22q11.2欠失症候群(TBX1),HDR症候群(GATA3),ほかの遺伝子異常(TBCEGCM2PTHCASR),低マグネシウム血症など.

・PTH抵抗性(PTH高値):偽性副甲状腺機能低下症(GNAS),ほかの遺伝子異常(PTHR1PDE4DPRKAR1A)など.

●治療方針

 低Ca血症に伴う症状の消失と血清Ca値(正常下限)の維持を目指す.

A.けいれん,意識障害,テタニーなど緊急を要する場合(Ca 7.0mg/dL以下,Ca2+<0.8mmol/L)

 心電図モニターを装着しCa製剤の静脈投与を行う.血管外漏出による組織内石灰沈着症の報告があり,特に新生児・乳児への投与時は注意する.

Px処方例 ➊を用いる.その後,経口摂取が困難な場合は➋持続点滴静注を用いる.

➊カルチコール注 1回0.5~1.0mL/kg 同量の5%ブドウ糖液で希釈し,20分かけて投与

➋カルチコール注 1日2mL/kgを持続点滴静注

a.併用禁忌 強心配糖体(ジゴキシンなど).

b.注意事項 クエン酸塩やリン酸塩,セフトリアキソン(CTRX)などとの配合により,沈殿が生じる場合がある.

B.内服治療の場合

 活性型ビタミンD製剤と経口Ca製剤を併用する.少量より開始し,血清Ca値が正常下限となるよう維持する.小児の血清Ca値は年齢ごとの基準値を参照する.血清C

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