●病態
・カルシウム(Ca)は生体内で神経興奮,筋肉収縮,血液凝固,細胞内シグナリングなどを司っており,低Ca血症時は神経筋易刺激性により,テタニー,手足れん縮,筋れん縮,けいれんなどを呈する.
・血清Ca濃度は主として副甲状腺ホルモン(PTH)と活性型ビタミンD〔1,25(OH)2D〕が,①腸管からの吸収,②腎でのろ過,再吸収,③骨への沈着と骨吸収を調節することにより維持される.したがってPTHと1,25(OH)2Dのいずれか,あるいは両者の作用が低下すると低Ca血症をきたす.
・マグネシウム(Mg)は600以上の酵素反応において補助因子として働いており,膜輸送,核酸・蛋白合成にも関与している.低Mg血症では,筋れん縮,不整脈,けいれんなどを呈する.また遠位尿細管からのカリウム(K)喪失による低K血症,PTH分泌不全およびPTH不応による低Ca血症を伴うことも多い.
・Caと異なり,血清Mg濃度を調節するホルモンはなく,Mgの恒常性は消化管からの吸収と腎からの排泄に依存する.したがって摂取不足,慢性下痢,吸収不良症候群,膵炎などによる吸収低下,あるいはサイアザイド系利尿薬,尿細管障害,Gitelman(ギテルマン)症候群などの遺伝性疾患による排泄増加により,低Mg血症をきたす.
●治療方針
A.低Ca血症
1.症候性低Ca血症
低Ca血症によりテタニー,けいれんなどを呈している場合,あるいは血清Ca<7mg/dLの場合は心電図モニター下でグルコン酸Caを静注する.
ジギタリス製剤を投与されている患者ではジギタリス中毒をきたす可能性があり,併用禁忌である.クエン酸塩,炭酸塩,リン酸塩,硫酸塩,酒石酸塩などを含む製剤と配合した場合,沈殿を生じることがあるので配合を避ける.また血管外漏出により組織内石灰沈着症,壊死をきたすため,ルート刺入部の観察を怠ってはならない.
Px処方例
カルチコール薬注
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