●病態
・ビタミンD欠乏症とは,ビタミンDが少ないために,身体的・骨X線学的徴候を呈した場合をいう.小児のビタミンD欠乏による主な徴候としては,くる病と低カルシウム血症がある.生体内のビタミンDの供給源には,食事からの摂取と,皮膚における紫外線による合成がある.
・近年のビタミンD欠乏症の背景には,ビタミンDの合成の低下と摂取の低下の両方の要因が考えられる.紫外線の害を心配して紫外線を避けすぎることや,日焼け止めクリームの常用によりビタミンD合成が低下する.
・摂取するビタミンDは,魚,卵,きのこ,乳児用ミルクなどに多く含まれる.カルシウム摂取の低下は悪化要因となる.
●治療方針
ビタミンD欠乏症の治療はビタミンDの内服を行う.本来ビタミンD欠乏症の治療は,天然のビタミンDの補充でよい.現在,日本で処方できる乳児用製剤は活性型ビタミンD製剤しかないため,過剰投与に注意して調節する.初期はやや多めに必要とすることがある.低カルシウム血症が強い例では,カルシウム製剤も併用する.治療とともに,栄養法,食事内容や食事制限,外出や日焼け止めなど,生活環境について指導する.
血中Ca,ALP,PTHが正常化してきたら維持量に減量し,骨X線所見の改善,生活の改善が確認できたら中止を検討する.中止後も一定期間フォローが必要である.
Px処方例 症状がある場合は➊を用いる.低カルシウム血症が強い場合は➋を併用する.
A.予防
全乳児に対し,ビタミンD欠乏のリスクの周知が必要である.乳児や食事制限中の児は,食事や乳児用ミルクなどからビタミンDを積極的にとること,適度な日光浴を勧めること,食事制限は危険性や必要性を認識して
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