診療支援
治療

川崎病(冠動脈病変を除く)
Kawasaki disease
森 雅亮
(東京医科歯科大学生涯免疫難病学・教授)

治療のポイント

・発症後10日までの解熱を目標にした治療戦略を常に考えておく.

・IVIG不応例では冠動脈病変(CALs:coronary artery lesions)併発例が多く,年間800~1,000例存在する.

・病初期の治療開始前でのCALsの発症予知はしばしば困難である.

・IVIG初回投与無効例に対しては,2nd lineあるいは3rd lineの積極的な治療法を導入することを検討する.

●病態

・川崎病は中血管である冠動脈に高頻度に病変(CALs)を形成し,小児期の虚血性心疾患を惹起する原因不明の疾患である.第24回川崎病全国調査成績によると,2016年の患者数は15,200人で,罹患率は0~4歳人口10万対309と年々増加傾向にある.

・本疾患の病態は「免疫系の異常な活性化」と「全身性の血管炎」に集約できる.不明の原因により高サイトカイン血症が惹起され,血管内皮細胞の活性化に関与する.

・急性期の症状は時間的経過に伴い重複して出没し,抗菌薬不応性の発熱,頸部リンパ節腫脹,眼球結膜の充血,苺舌,口唇の発赤・亀裂,手足の硬性浮腫や指趾先端の発赤などの血管炎症状がそろい病像が完成する.

・発熱出現の前後からBCG接種部位の異常発赤を呈することも特徴的である.その後CALsをきたす例では,第10病日前後から心超音波検査にて,冠動脈の拡張・瘤形成が検出される.

・診断は旧厚生省研究班作成の「川崎病診断の手引き」に即して行われる.症状の詳細については日本川崎病学会ウェブサイト(http://www.jskd.jp/info/photo.html)を参照していただきたい.主要症状が4症状以下の不全型川崎病も20%程度報告されているため,疑わしい場合では心臓超音波検査を施行する必要がある.

●治療方針

 川崎病の治療戦略は,急性期にみられる多彩な臨床症状の対応に終始することなく,CALsの発生前

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