診療支援
治療

麻疹
measles
岡部信彦
(川崎市健康安全研究所・所長)

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[感]5類 [学]2種(解熱した後3日を経過するまで)

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●病態

・麻疹は,麻疹ウイルスの感染により発症する急性熱性発疹性疾患である.麻疹ウイルスは単一の血清型であるが,遺伝子型は24に分類され,国内流行の主流であったウイルスはD5,フィリピンではB3,中国ではH1,アジア各地ではB8,欧州ではD3のように,ある程度の地域性がわかる.ワクチン株はすべてA型であるが,いずれの遺伝子型ウイルスに対しても有効な抗体が誘導される.

・空気感染,飛沫感染,接触感染で伝播し,きわめて感染力が強いが,熱,紫外線,酸,エーテルなどで容易に不活化され,空気中や物体表面での生存時間は短い.

・典型的な臨床経過は,潜伏期(8~12日間),カタル期(2~4日間),発疹期(3~5日間)を経て回復期となるが,高熱・激しい咳嗽に苦しむ.麻疹の約30%は,下痢,中耳炎,肺炎,脳炎など何らかの合併症があり(「亜急性硬化性全脳炎」),致命率は先進国においても0.1~0.2%,途上国では10~50倍にもなる.経過中に免疫抑制状態に陥るところから,細菌感染などを併発すことも少なくない.二大死因は肺炎と脳炎である.

・国内でMR(麻疹+風疹)ワクチン接種率が高く維持され患者発生は激減,平成27(2015)年WHOより麻疹排除達成国と認定された.現在の国内の麻疹は,海外からウイルスが持ち込まれ,それに続く免疫不十分な成人を中心とした感染の広がりである.ワクチン接種者でもまれに発症することがあり,その症状は軽く修飾麻疹とよばれるが感染力は低くなり,2回麻疹ワクチンを接種した者からの2次感染はほぼないので,2回の麻疹ワクチン接種は有効である.

●治療方針

A.基本方針

 基本的に

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