診療支援
治療

ムンプス(流行性耳下腺炎,おたふくかぜ)
mumps,epidemic parotitis
細矢光亮
(福島県立医科大学小児科学・教授)

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[感]5類 [学]2種(耳下腺,顎下腺または舌下腺の腫脹が発現した後5日を経過し,かつ,全身状態が良好になるまで)

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●病態

・ムンプス(流行性耳下腺炎,おたふくかぜ)は,耳下腺の腫脹と疼痛を主症状とする,ムンプスウイルスによる全身感染症である.ムンプスウイルスは,飛沫感染あるいは唾液を介する接触感染によりヒトからヒトに感染する.

・潜伏期間は多くは14~18日である.3割程度は不顕性感染であり,発症した場合も唾液腺の腫脹や疼痛などの軽度の症状で経過することが多い.

・しかし中枢神経や性腺などの全身臓器にも感染するため,無菌性髄膜炎,急性脳炎,睾丸炎,卵巣炎,膵炎,難聴などの合併症をきたすことがあり,特に脳炎や難聴は恒久的な障害を残す場合もある.

●治療方針

 ムンプスに対し臨床的に有効な抗ウイルス薬や特異的治療法はない.発熱や唾液腺の腫脹・疼痛を訴えるが,通常は治療を要しない.疼痛が続く場合は症状をやわらげる目的に,アセトアミノフェンなどの鎮痛薬の投与や,冷湿布の貼付を行う.

A.唾液腺の疼痛が続く場合

Px処方例

カロナール細粒(20%) 1回10mg/kg(成分量として) 1日数回まで(最大1日60mg/kg)

 有熱期間中は,安静と水分摂取を指示する.食物は摂取しやすい軟食とし,唾液分泌の促進は疼痛を増強させるので酸味の強い食事は与えない.唾液腺の腫脹が発現したあと,5日を経過するまでは登園・登校を控える.

 疼痛による嚥下障害などで水分摂取量が減少した場合は補液を行う.無菌性髄膜炎などの合併症が認められた場合は,入院加療を考慮する.

B.予防

 ムンプスに対してはワクチンが唯一の予防法である.わが国では1989年にMMRワクチンとし

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