診療支援
治療

非結核性抗酸菌症
nontuberculous mycobacterial(NTM)diseases
森 雅亮
(東京医科歯科大学生涯免疫難病学・教授)

●病態

・現在,ヒト型結核菌以外の抗酸菌は非結核性抗酸菌(NTM:nontuberculous mycobacteria)と称される.以前は非定型抗酸菌とよばれていたが,現在はNTMで統一されている.マイコバクテリウム(Mycobacterium)属菌のうち,70~80%はMycobacterium avium complex(MAC)によるものであるが,その他Mycobacterium kansasiiによるものが10~20%である.

・NTM症は日和見感染症の1つであり,主に呼吸器感染症を惹起するが,ヒト-ヒト感染は否定されている.臨床経過は急速に進行するものから,数年にわたって症状の悪化を呈するものまで多岐にわたる.成人と異なり小児では肺病変を起こすことはほとんどなく,頸部のリンパ節炎の報告例が多い.

・最近は,腫瘍壊死因子(TNF:tumor necrosis factor)阻害薬がいくつかの疾患に使用されるようになったが,その使用時の合併症としてNTM症が注目されている.

・MAC症は,①結核類似型(空洞形成し,陳旧性結核,塵肺,肺気腫などの基礎疾患に続発する),②小結節・気管支拡張型(肺の胸膜直下に小結節が散布し,その近傍に小さな気管支拡張像がみられる.肺中下葉に多い),③全身散布型(HIV感染者など免疫不全患者に多い)の3型に大別される.

・診断には喀痰抗酸菌特異的遺伝子増幅検査,抗原特異的インターフェロン-γ遊離検査,高解像度CTが有用である.結核病学会の診断基準では,1年以内に少なくとも3回の喀痰または気管支洗浄液の培養を行い,塗抹陽性であれば2回の培養が陽性,塗抹陰性なら3回以上陽性であればMAC症と診断する.

●治療方針

 わが国では,MAC症の経験的治療法として,クラリスロマイシン(CAM,クラリス)にリファンピシン(RFP,リファジン)とエタンブトール(EB,エ

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