診療支援
治療

先天性トキソプラズマ症
congenital toxoplasmosis
森岡一朗
(日本大学小児科学・主任教授)

●病態

・3主徴は網膜脈絡膜炎,脳内石灰化,水頭症であるが,臨床的にそろうことはまれである.その他,小頭症,血小板減少による点状出血,貧血などがある.

・しかし,これらの症状はほかの先天性感染症でも同様の症状を呈することがあるため,出生時の臨床症状だけで診断することは困難である.

・確定診断は新生児血中トキソプラズマIgMや血液,尿,または髄液トキソプラズマDNAを用いる.

・ただし新生児血のトキソプラズマIgMやトキソプラズマDNAは偽陽性となる症例があることから,生後12か月時に血中トキソプラズマIgGが陽性であることを確認する.

・先天性トキソプラズマ症は,精神運動発達遅延,てんかん,視力障害などの神経学的・眼科的後遺症を合併することがある.

●治療方針

 治療の目的は重度の神経学的・眼科的合併症の発症の抑制にある.出生時に先天性トキソプラズマ症の症状を有する場合は治療を行う.慢性期になって治療を開始してもすでに症状が固定化し,治療効果が期待できないため,無症候性感染の場合でも治療を行うことが推奨される.

 先天性トキソプラズマ症の治療法はまだ確立されておらず,いずれの薬剤も保険適用はない.したがって治療は同意を取得して行う.

 保険適用はないが,ホリナート(ロイコボリン),プレドニゾロン(プレドニン)は国内で入手は可能である.しかしピリメタミン(Daraprim)とスルファジアジン(Sulfadiazine)は日本では製造販売されていない.熱帯病治療薬研究班に参加する薬剤使用機関(http://www.nettai.org)において,ピリメタミンとスルファジアジンの有効性と安全性を評価する臨床研究に参加し,治療を受けることができる.

 スルファジアジンを新生児期に投与する場合はビリルビン脳症の発症のリスクが上がるため,血中ビリルビン/アルブミン比やアンバウンドビリルビンをモニタリングし

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