診療支援
治療

線虫症,吸虫症,条虫症
nematodiasis,trematodiasis,cestodiasis
大西健児
(鈴鹿医療科学大学看護学部・教授)

●病態

・線虫,吸虫,条虫は,成虫あるいは幼虫が人体に寄生し,そこから栄養を得て生存する多細胞動物(蠕虫)で,寄生部位によりさまざまな影響を人体に与える.

・寄生部位は腸管,肺,肝臓,眼球,血管腔など,虫種により多岐にわたる.

・線虫症:代表的な疾患として蟯虫症,アニサキス症,回虫症,鞭虫症,トキソカラ症(イヌ・ネコ回虫症),糞線虫症などがある.

・吸虫症:代表的な疾患として横川吸虫症,異形吸虫類症,肺吸虫症,住血吸虫症などがある.

・条虫症:代表的な疾患として日本海裂頭条虫症,瓜実条虫症,無鉤条虫症,多包虫症などがある.

●治療方針

A.線虫症

1.蟯虫症

 肛門周囲瘙痒感などの症状を呈する.肛門周囲にテープ(専用テープあり)を粘着させ,それを顕微鏡で観察し虫卵を検出することで診断する.

 時に母親が肛門周囲の成虫に気づくことがある.コンバントリン錠やそのドライシロップ,メベンダゾール錠,エスカゾール錠の有効性が知られている.

Px処方例 下記のいずれかを用いるが,わが国では➊が第1選択と考えられる(➋➌は保険適用外).いずれも2~3週後に再度同量を投与する(初回投与時に薬剤の効果が少ない幼虫であったものが成虫に発育しているため).再発する場合は同居人の同時服薬も考慮する.

➊コンバントリン錠またはドライシロップ 1回10mg/kg(成分量として) 単回投与(2~3週後に再度同量を投与)

➋メベンダゾール錠 1回100mg(体重20kg以下の小児では50mg) 単回投与(2~3週後に再度同量を投与)

➌エスカゾール錠 1回200mg(2歳未満),1回400mg(2歳以上) 単回投与(2~3週後に再度同量を投与)

2.アニサキス症

 アニサキス類の幼虫感染症で,その本態はアレルギー反応である.他の寄生虫症に比較して受診頻度が比較的高い疾患で,成人患者が多いが小児患者も存在する.胃アニサキス症が有名で

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