診療支援
治療

性感染症(女性,男性)
sexually transmitted infection(female,male)
早乙女智子
(ルイ・パストゥール医学研究センター)

●病態

・性的行為によって病原体に感染し,持続感染を起こすウイルス性の疾患と,かゆみや分泌物の増加などの症状が出るクラミジアなどの感染症がある.

・小児においては,性的虐待や性被害を疑う根拠となる.

・外遊びで感染するのは土中の雑菌などであり,梅毒,クラミジア,HIVなどの性感染症は基本的にヒトからヒトへの性行為でのみ感染する.口腔内,性器や肛門など性的行為によって侵襲を受ける粘膜病変が主である.

・近年,梅毒の増加が著しい.進行度により症状が多彩なので疑うことが重要である.

A.症状

・陰茎亀頭部の発赤,陰部皮膚病変,水疱,いぼ,膿状の分泌物,痛みや瘙痒感,鼠径リンパ節腫脹など(男児).

・外陰部の発赤,かゆみ,水疱,いぼ,白色,黄色~緑色などの帯下,鼠径リンパ節腫脹など(女児).

B.診察のポイント

・幼児では症状の訴えが直接的ではないので,頻繁に性器周りを触る,トイレに行くなどの普段と違う様子から感染症を疑う.

・診察が性的トラウマにならないように観察することが望ましい.女児では仰向けではなくよつんばいになってもらい,「おしりを診るね」と殿部側から診察してもよい.

・また子どもの語りのなかに,加害者からの口止めや自責感からの語りにくさなどの糸口を注意深くみつける.子どもは大人の顔色を見て修正を試みてしまうため,質問は反復しないことが原則である.

・犯罪性が考えられるときは,子どもの語りをそのまま書き取って記録する.男児の性被害は見過ごされやすい.性加害の加害者の立件のための証拠保全として,外傷や全身検査と局所を含めた写真撮影があとで役に立つ.

・ワンストップ支援センターなどでは問診と検査,対処が被害者の負担にならないように行われている.

C.検査

・感染局所擦過:一般細菌培養検査,淋菌・クラミジアPCRキット,ヘルペスウイルス検査.

・血液検査:梅毒(RPR,TPHA,FTA-ABS法),HBV抗原

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