診療支援
治療

胸膜炎,膿胸
pleuritis and empyema
西 順一郎
(鹿児島大学大学院微生物学・教授)

治療のポイント

・胸水排液と抗菌薬療法が基本となる.

・貯留液が適当量あり採取可能なとき,抗菌薬を投与するときは,胸腔穿刺を行う.

・胸水が膿性のとき,抗菌薬療法への反応が悪いとき,貯留液で呼吸機能が障害されているときは,持続ドレナージを行う.

・膿胸では,胸水の塗抹グラム染色所見を参考に,初期抗菌薬を選択する.

・菌血症を合併していなければ,標準的治療期間は7日間である.

・抗菌薬療法やドレナージへの反応が十分でない症例では,線維素溶解療法や胸腔鏡下剥皮術を行う.

●病態

・胸膜炎は,胸膜の炎症であり,壁側胸膜と臓側胸膜で囲まれた胸膜腔に胸水が貯留する.

・発熱,咳嗽,胸痛,腹痛,努力呼吸がみられる.

・理学所見では,病変側の呼吸音減弱,胸膜摩擦音,打診での濁音を認める.

・胸水貯留が明らかでない線維素性(乾性)胸膜炎,漿液性の胸水が貯留する滲出性(湿性)胸膜炎,膿性の胸水が貯留する膿胸に分けられる.

・線維素性(乾性)胸膜炎は,細菌やウイルスによる肺炎や結核に伴う.

・滲出性(湿性)胸膜炎は,肺炎マイコプラズマ,ウイルス,結核,寄生虫(肺吸虫)などの感染症,SLEなどの膠原病,肺・胸膜・縦隔の癌が原因となる.

・膿胸の原因病原体は,基礎疾患がない場合はA群レンサ球菌,肺炎球菌が多く,基礎疾患がある場合は黄色ブドウ球菌,緑膿菌が多い.そのほかインフルエンザ菌,アンギノーサス群のレンサ球菌,嫌気性菌などが原因となる.

●治療方針

 基礎疾患に対する治療と貯留液に対する治療(胸水排液)に分けられる.細菌感染症では抗菌薬療法と胸水排液の両方が必要となる.また,線維素溶解療法や胸腔鏡下剥皮術などの外科的治療も適応になる場合がある(肺炎マイコプラズマや結核菌による滲出性胸膜炎における抗菌薬療法は,それぞれの原因菌の項目を参照).

A.胸水排液

1.胸腔穿刺の適応

 a)貯留液が適当量(側臥位で胸壁内側から1cm以上)あ

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