●病態
・抗菌薬起因性腸炎は,抗菌薬投与後数時間~数か月後に腸内細菌叢の破綻・菌交代現象により起きる腸炎とされている.すべての抗菌薬が発症のリスクになりうる.
・多くが抗菌薬の中止で改善を見込めるが,一部に発熱,嘔吐,腹痛,下痢,血便,イレウスなどを認め,腸管粘膜にびらん,潰瘍や偽膜形成をきたす.
・内視鏡的に偽膜形成を認めるものは偽膜性腸炎(PMC:pseudomembranous colitis)とされ,C.difficile(CD)が原因となっていることが多い.CDが原因で偽膜を形成するものは50%程度とされている.CDはグラム陰性桿菌で,嫌気性菌のため便培養で証明することは難しく,産生される毒素(toxin A,B)の検出により診断されることが多い.この毒素により腸管粘膜の障害が生じて腸炎を発症する.
・診断は,ラテックス凝集反応を利用した迅速キットが市販されているため汎用されている.
・CD以外ではMRSA腸炎やKlebsiella oxytocaによる出血性大腸炎が多いとされている.なお新生児,乳児では無症候性のCD保菌者が一定数存在することから,ルーチンで検査をすることは避けたい.
●治療方針
A.一般的治療
まず最初に投与中の抗菌薬を中止する.全身状態,重症度に応じて補液療法や食事療法を施行する.重症度が高ければ絶食も考慮する.薬物療法としてはタンニン酸アルブミン,ケイ酸アルミニウムを投与することはあるが,漫然と使用するべきではない.
またロペラミド塩酸塩は,腸管蠕動抑制作用があるため投与に慎重になるべきである.下血や6か月未満の乳児には禁忌であり,6か月~2歳には原則禁忌である.抗菌薬耐性乳酸菌製剤は,腸内環境の改善を期待できるため処方することが望ましい.
B.病態による治療
Px処方例 ➊を用いる.PMCの場合は➋~➍も併用する.
➊ビオスリー薬配合散 1日1~3g(成人量
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