診療支援
治療

膵炎
acute pancreatitis
小林宗也
(済生会横浜市東部病院小児肝臓消化器科)

●病態

・急性膵炎は,膵臓の急性炎症で膵の炎症が全身に波及し,血管内皮細胞傷害から遠隔臓器不全や播種性血管内凝固症候群(DIC)をきたす.

・わが国の小児における急性膵炎の成因は,胆道拡張症や膵・胆管合流異常などの解剖学的異常に起因するものが多く,その他に薬剤性,感染性,外傷性などがある.成因不明(特発性)とされていたなかに,近年,遺伝性膵炎が含まれていることが注目されており,家族歴の聴取が重要である.

・症状は腹痛,背部への放散痛,食欲不振,発熱,嘔気・嘔吐,腸蠕動音の減弱などが頻度の高い症状・徴候であるが,いずれも特異的ではないため,ほかの急性腹症との鑑別を要する.

・診断は小児においても成人を対象とした臨床診断基準(厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班2008年)に準じて行う.臨床症状,生化学検査および腹部超音波検査,腹部CTなど画像検査所見から行うことが原則であり,同時に鑑別疾患や重症度判定を行う.

・血中アミラーゼ,リパーゼ値の上昇は重症度を反映しないが診断には重要である.特にリパーゼは,急性膵炎診断に対する感度・特異度は高く,血中アミラーゼ値が正常である場合の急性膵炎の診断に有用である.

●治療方針

 急性膵炎と診断した場合は重症度判定を行い,軽症・中等症では基本的治療を継続する.重症例は高次医療機関に搬送し,呼吸・循環のモニタリングのため集中治療室での入院管理が望ましい.診断時軽症でも急激に重症化することがある.特に発症後48時間以内は重症度を繰り返し評価し,十分な輸液とモニタリングを行い,適切な疼痛コントロールを行う.またbacterial translocationの予防のため,腸蠕動がなくても診断後48時間以内に栄養チューブを用いた持続鼻注などで,経腸栄養を少量から開始する.

A.体液・電解質・血糖の補正

 細胞外液(乳酸リンゲル液など)を用い,各年齢における正常血圧

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