診療支援
治療

Eisenmenger症候群
Eisenmenger syndrome
加藤太一
(名古屋大学大学院成長発達医学・准教授)

●病態

・Eisenmenger(アイゼンメンゲル)症候群は左右シャントをもつ先天性心疾患において,肺血管抵抗の上昇による肺高血圧症が体血圧を凌駕する肺動脈圧となるまで進行することで,右左シャントとなりチアノーゼを認める症候群である.

・最近では小児期に的確に原疾患に対する手術が行われることが多いため,小児症例はまれであるが,20~30歳代に罹患者の年齢のピークがある.

・肺高血圧症としての病態や合併する心不全,不整脈のほか心臓以外の合併症として下記などがあげられ,これらに対する管理も重要である.基本的に専門医あるいは専門医との連携のもとに診療を行うことが望ましい疾患である.

 a)血液学的異常:赤血球増多,過粘稠度症候群,出血傾向,脳血栓,喀血など

 b)尿酸代謝異常:尿酸値高値,痛風性関節炎など

 c)腎臓合併症:ネフローゼ症候群,腎不全など

 d)感染症:感染性心内膜炎,脳膿瘍など

 e)四肢長管骨の異常:ばち指,肥厚性骨関節症など

 f)ビリルビン代謝異常:胆石,胆嚢炎など

●治療方針

 肺高血圧症に対する治療のほかに,全身合併症に対する管理も重要である.

 肺高血圧症に関しては,NYHA/WHO機能分類Ⅰ/Ⅱ度については治療についての一定の見解は得られていない.一方で,成人ではNYHA/WHO機能分類Ⅲ/Ⅳに関してはランダマイズ化比較試験にて,ボセンタン(トラクリア)による肺血管抵抗の低下や運動耐容能の改善が示されており,小児でもこうした薬剤は使用可能と考えられる.また,より重篤な状態では心肺移植なども考慮される.労作時息切れが強い場合は在宅酸素療法も行われる.なお心不全,不整脈に対する治療については該当する項目を参照してもらいたい.

A.肺高血圧症に対する治療

1.NYHA/WHO機能分類Ⅰ/Ⅱ度の場合

 肺高血圧症治療の有効性について一定の見解はないが,経口の肺血管拡張薬の投与は考慮しても

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