診療支援
治療

大動脈狭窄
aortic stenosis(AS)
田中靖彦
(静岡県立こども病院循環器センター・センター長)

●病態

・大動脈狭窄は狭窄部位により,弁狭窄,弁上狭窄,弁下狭窄に分類される.

・大動脈弁狭窄は,交連部の癒合による弁尖の異常で起こることが多い.二尖弁となることが最も多いが,新生児重症大動脈弁狭窄では肥厚の強い異形成弁のこともある.大動脈弁逆流を伴うこともある.

・大動脈弁上狭窄はWilliams(ウィリアムズ)症候群に関連して起こることが多い.冠動脈入口部の狭窄を合併することがある.

・大動脈弁下狭窄は大動脈縮窄,大動脈離断,房室中隔欠損などの疾患に合併する場合と,単独で起こる場合がある.

・いずれの狭窄でも左室の後負荷が増大し,左室圧が上昇する.左室には求心性肥大が起こり,左室心筋は肥厚してくる.強い圧負荷が持続すると左室心筋の線維化が生じ,拡張能だけでなく収縮能も低下する.

・軽症から中等症の患者では無症状であるが,重度の狭窄の患者では労作時息切れ,運動時の胸痛や失神などが起こる.さらに運動時に突然死が起こることもあるため,程度に応じ運動制限が必要である.

・新生児期の重症例では左室が後負荷に耐えられずに,胎児期より左室の拡張や収縮能低下をきたしている場合がある.

・心エコー検査がきわめて有用であり,狭窄の形態,狭窄の重症度,心筋肥厚,心機能,合併異常の有無などを評価する.手術適応の決定のために心臓カテーテル検査が行われることが多い.左室-大動脈圧較差や冠動脈の評価を行う.

●治療方針

A.大動脈弁狭窄

1.新生児重症大動脈弁狭窄

 左室機能が低下しているような症例に対しては,動脈管を維持し右室からの拍出で体循環を維持するような症例もある.左心系のサイズや心内膜線維弾性症の有無などにより,二心室循環が可能かどうかを判断する必要がある.二心室循環が可能な症例に対しては,大動脈弁に対する介入を行うが,直視下の弁形成術と経皮的バルーン弁形成術の2つの方法がある.二心室循環が不可能と判断された場合

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