●病態
・体位の変化などによる循環血液量の不足と自律神経系の活動,すなわち心拍数増減や末梢血管抵抗の増減などが適切に作用しないために引き起こされる病態である.
・有病率は軽症例も含めると小学生の約5%,中高生の約10%といわれている.
・症状は立ちくらみ,ふらつき,動悸,息切れ,食欲不振,腹痛,倦怠感,失神または失神前症状,頭痛,思考力などの高次機能の低下である.
・午前中に症状が増悪することが多く,朝起きることができず,登校困難など生活のリズムが不安定になる.
・「小児心身医学会ガイドライン集 改訂第2版」(2015)のうちの「Ⅱ小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン」では,以下4つのサブタイプに分類している.
a)起立直後性低血圧:起立直後に強い血圧低下および血圧回復の遅延を認める
b)体位性頻脈症候群:血圧低下を伴わず心拍増加が強い
c)血管迷走神経失神:起立中に突然に収縮期と拡張期の血圧低下ならびに起立失調症状が出現し,意識低下や意識消失発作を生じる
d)遷延性起立性低血圧:起立直後の血圧,心拍は正常であるが,起立後3~10分を経過して血圧が低下する
・診断の手順は,①OD症状のスクリーニング(問診),②診察と基礎疾患の除外,③新起立試験によるサブタイプを診断,④身体重症度の判定(新起立試験の結果と日常生活状況の両者を統合し,軽症,中等症,重症の3段階に判定する),⑤「心身症としてのOD診断チェックリスト」を用いて社会的背景の有無を判定する,の5段階で診断を進めることを,前述のガイドラインでは推奨している.
●治療方針
A.疾病教育,非薬物療法
すべての症例に疾病教育,非薬物療法を確実に行う.
坐位や臥位からの起立時には頭位を下げたままゆっくり起立する.水分補給を励行し,運動不足を解消する.心理社会的関与がある場合には,学校への指導や連携を行う.
B.薬物療法
中等症以上は薬物治療
関連リンク