診療支援
治療

WPW症候群
Wolff-Parkinson White syndrome
中村好秀
(大阪市立総合医療センター小児不整脈科・診療顧問)

●病態

・通常は心電図でPR短縮,デルタ波の存在により診断される.

・病因は心房と心室間の房室副伝導路の存在であり,発作性上室頻拍,心房細動時の高頻度心室応答などによる頻拍性不整脈の合併と,心室非同期による心機能障害が生じる.

・房室副伝導路は多くは心房と心室固有心筋間の特殊心筋が原因であるが,まれに心房と心室内刺激伝導系(右脚)間の心房束枝副伝導路が含まれる.デルタ波が存在しても心室内の束枝心室副伝導路が原因であることがあり,これは臨床的に頻拍性不整脈との関連はない.鑑別診断が重要である.

・房室副伝導路は順行伝導(心房から心室)と逆伝導(心室から心房)が存在する.逆伝導のみの場合は潜在性WPW症候群でデルタ波が存在せず,頻拍発作がなければ診断は困難である.順行伝導を示すデルタ波が明確なものは顕性WPW症候群と診断される.デルタ波が間欠的な場合には,間欠性WPW症候群と診断される.

・デルタ波が不明瞭な順行伝導が存在する潜伏性WPW症候群もあり,心房期外収縮などでデルタ波が顕在化することで診断ができる.

●治療方針

 頻拍発作に対する治療が主体となる.心室拍数が一定の発作性上室頻拍と,QRS波形とRR間隔が変動する心房頻拍による高頻度心室応答(いわゆる偽性心室頻拍)があり,心電図での確認が必要となる.

A.発作性上室頻拍の治療

 a)息こらえ,顔面冷水など迷走神経刺激を試みると停止することがある.➊ワソランの頓服も有効である.

 b)頻拍が停止しない場合には,房室結節伝導を停止する目的でアデノシン三リン酸二ナトリウム(ATP)製剤(➋アデホス-L)を投与する.投与時は必ず心電図をモニターする.頻拍が停止しないときには,房室ブロックや房室解離がなければ,ATP製剤の効果がないために増量またはより急速に投与する.

 c)喘息などでATP製剤が投与できないときは➌ワソランを投与する.

 d)QRS波形

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