診療支援
治療

洞不全症候群
sick sinus syndrome(SSS)
鈴木嗣敏
(大阪市立総合医療センター小児不整脈科・部長)

●病態

・心拍数を規定している洞結節の機能障害である.洞結節と心房の間の伝導障害が原因になることもある.

・基礎疾患は不明なものが多いが,家族性の房室伝導障害には,Naチャネル(SCN5A)などの遺伝子異常との関連や,洞結節のペースメーカー電流に関与しているHCN4Aの変異が報告されている.

・Fontan(フォンタン)手術後は,洞不全症候群をきたすことがある.心房が両側左心房形態となる多脾症候群も洞不全症候群を合併することがある.

・Rubenstein(ルーベンシュタイン)分類を下記に示す.

A.1型:原因不明の著しい持続性洞徐脈(心拍数50/分以下)

・著しい持続性洞徐脈を呈するもので,成人では心拍数50/分以下を異常と定義している.小児の正常心拍数は成人よりも早いため,Kuglerらはホルター検査の最低心拍数の評価について表1のように定義している.

・洞徐脈のため洞調律が接合部調律を下回る場合,房室解離を認めることがある.接合部調律に逆行性心房興奮を伴う場合,洞調律のP波は消失する.

B.2型:洞停止,洞房ブロック(洞結節と心房の間の伝導障害により心房興奮の脱落をきたす)

・洞停止,洞房ブロックのため,脈が一過性に飛ぶ状態である.

・洞停止は洞結節の刺激生成が停止した状態,洞房ブロックは洞結節から心房筋への興奮伝搬が途絶することが原因となる.

C.3型:徐脈頻脈症候群(徐脈発作と心房粗動,心房細動などの上室頻脈発作を繰り返す)

・徐脈頻脈症候群とよばれる病態で,1型,2型の徐脈と上室性頻拍を繰り返す病態である.

・成人では心房細動が多く,洞不全症候群の約50%は3型とされている.小児では心房粗動と合併することが多い.

●治療方針

 原則として無症状の場合,治療は行わない.Adams-Stokes(アダムス・ストークス)発作を認める場合は,日本循環器学会の「不整脈非薬物治療ガイドライン(2018

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