診療支援
治療

先天性溶血性貧血
congenital hemolytic anemia
大賀正一
(九州大学大学院成長発達医学・教授)

●病態

・成熟赤血球の崩壊亢進による赤血球寿命の短縮によって発症する単一遺伝子病の総称である.サラセミア(地中海貧血)は,溶血よりもヘモグロビン分子の不均衡による無効造血が一義的原因だが,小児では先天性溶血性貧血として分類されることが多い.

・原因は赤血球膜蛋白,酵素およびヘモグロビンの異常に大別され,わが国では特に膜蛋白異常症の割合が高い.

 a)赤血球膜蛋白異常症:遺伝性球状赤血球症(HS:hereditary spherocytosis)は家族集積性が高い.HSのほか遺伝性楕円赤血球症などがある.赤血球の形態診断と遺伝子異常は必ずしも一対一対応ではない

 b)ヘモグロビン異常症:サラセミアが最も多く,日本人の約1,000人に1人とされ,そのほとんどはβサラセミアである.まれに不安定ヘモグロビン症などがある

 c)赤血球酵素異常症:ピルビン酸キナーゼ(PK)異常症,男児のグルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)異常症などがある.頻度は低い

・病歴と臨床検査により診断する.必要に応じて,専門施設で特殊検査と遺伝子解析を行う.国際結婚や外国人の場合は,特にヘモグロビン異常症と赤血球酵素異常症に注意する.

A.病歴

・重症および遷延性の黄疸で,新生児期に光線療法や交換輸血を受けていることがある.

・乳児期の感染症(突発性発疹など)やそのときの投薬に伴って溶血をきたすことがある.

・家系内の貧血,胆石(と胆嚢摘出)および脾腫(と摘脾)を確認する.

・親のどちらかが日本人でない場合には,サラセミア(東南アジアが多い)などのヘモグロビン異常症やG6PD異常症を念頭におく.

B.臨床検査

・末梢血塗抹標本で血球形態を観察し,網赤血球数増加,血清LDH上昇(アイソザイムⅠ型),血清ハプトグロビン値低下および間接ビリルビン上昇を確認する.

・クームス試験で(同種・自己)免疫性溶血性貧血を否定する.

・赤血球浸透圧

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