治療のポイント
・小児では比較的寛解を得やすいことから,症状の寛解と合併症の予防が治療目標である.
・特に副腎皮質ステロイドによる副作用には十分に注意し,有効性と副作用を見きわめたうえで,適宜免疫抑制薬の併用も考慮する.
・幼児の眼瞼下垂では,視機能への影響に留意して眼科医と連携して治療を進める.
・難治例では,生活に大きな支障のない程度の軽微症状が残存していても,副作用の少ない最小限の治療目標を設定する.
●病態
・骨格筋の神経筋接合部の分子を標的とする自己免疫疾患で,筋力低下,易疲労性をきたす.
・アセチルコリン受容体,次いで筋特異的受容体型チロシンキナーゼなどに対する自己抗体が原因だが,小児では抗体陰性例も多い.
・小児では眼筋に症状が限局する眼筋型が全身型に比較して多いが,症状が眼筋に限局し,四肢の反復刺激試験陽性を示す潜在性全身型も知られている.
・症状と塩酸エドロホニウム試験,反復刺激試験,自己抗体の検出などで診断する.
・胸腺腫やほかの自己免疫疾患の合併に留意する.
●治療方針
視機能や発達への影響に配慮し症状の寛解を目指すが,長期的にはクリーゼ(筋無力症およびコリン作動性)の予防と,副作用に十分に留意した治療によるQOLの向上を目標に治療する.
A.眼筋型
第1選択薬は抗コリンエステラーゼ薬だが,対症療法であることに留意する.2週~1か月で増量して寛解が得られないときは,副腎皮質ステロイドを使用する.十分量のステロイドでも寛解しなければ,カルシニューリン阻害薬を用いる.
B.全身型
副腎皮質ステロイドを少量から開始するが,開始後2~5日目に一過性初期増悪があるため原則として入院管理を行う.ステロイドパルス療法を行うこともあるが,増悪回避のため少量の経口投与を先行する.効果不十分の場合はカルシニューリン阻害薬を併用する.タクロリムスは免疫抑制作用とは別に,筋無力症状への直接的効果もある
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