診療支援
治療

在宅での呼吸器のケア(呼吸器,リハビリテーション)
土畠智幸
(医療法人稲生会・理事長(北海道))

●病態

・呼吸障害の原因は,酸素化障害と換気不全に分けられる.

A.酸素化障害

・肺胞レベルでのガス交換の障害.肺炎などの気道感染症,摂食物や口腔内分泌物の誤嚥,微小無気肺,間質性肺炎,肺水腫など.酸素を肺毛細血管に取り込むことができずSpO2は低下するが,pCO2はガスの特性上,換気さえ保たれていれば上昇せず,呼吸苦により多呼吸になることでむしろ低下する.

B.換気不全

・肺全体として換気が不十分になる.脳,脊髄,神経,筋肉,肺実質,胸郭運動の異常など.SpO2は軽度低下し,pCO2は上昇する.

・小児の慢性呼吸障害では,心疾患や誤嚥を除き換気不全が原因であることが多い.

・慢性換気不全の症状として,疲労感,集中力低下,朝の頭痛,夜間の発汗過多,頻回の気道感染などがあるが,いずれも非特異的な症状であり他疾患との鑑別が重要である.

●治療方針

 酸素化障害と換気不全のいずれが主な原因であるかを区別して治療やケアを検討する必要があり,SpO2の上昇だけを目的としてはならない.特に在宅でのケアにおいては,入院中とは異なりSpO2やpCO2などの指標を頻回に確認できないため,介入開始前にしっかり病態を評価する必要がある.

A.酸素化障害

 原因に対する治療として,肺炎に対する抗菌薬や心不全に対する利尿薬などがある.無気肺については排痰リハビリテーションを行う.これらが奏効しない場合,酸素吸入が必要となる.誤嚥については経口摂取の中止により改善する場合もあるが,それでも持続的にSpO290%以下となる場合,窒息イベントを起こした場合,年6回以上の気道感染症を呈する場合には,喉頭気管分離術などの外科的な誤嚥防止術を考慮する.

B.換気不全

 慢性換気不全の初期は日中のSpO2,pCO2ともに正常であるが,睡眠時の呼吸モニタリングを行うとREM睡眠期に低換気所見を認めることがあり「夜間低換気」とよばれる(図1

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