今日の診療
治療指針

多発ニューロパチー
polyneuropathy
桑原 聡
(千葉大学大学院教授・脳神経内科学)

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ニュートピックス

・クロウ・深瀬症候群に対して,免疫調整薬であるサリドマイドが国際的にも初めての治療薬として本邦で2021年に承認された.

・トランスサイレチン型家族性アミロイドーシスに対するRNA干渉治療薬であるパチシランが2019年に承認された.

◆病態と診断

A病態

多発ニューロパチーとは四肢の末梢神経が両側・対称性に障害される疾患の総称であり,四肢遠位部優位の運動・感覚障害をきたす.

・病因(原疾患)は多岐にわたるが,糖尿病,アルコール(ビタミン欠乏を含む),化学療法による薬剤性が頻度の高い3大病因である.その他の病因として,炎症・免疫介在性(ギラン・バレー症候群,慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー),代謝性(腎不全,原発性アミロイドーシス),中毒性(ノルマルヘキサン,鉛,有機水銀),遺伝性(シャルコー・マリー・トゥース病,トランスサイレチン型家族性アミロイドーシス,ファブリ病,ポルフィリン症),傍腫瘍性,感染性(ハンセン病,ジフテリア)など多彩である.

神経障害性疼痛は主訴になることが多く,高度の場合には対症療法が必要となる.

B診断

・両側対称性で遠位部優位の運動症状(筋力低下,筋萎縮),感覚症状(鈍麻,しびれ・痛み)を呈し,腱反射は低下・消失する.

・既往歴(糖尿病,抗癌剤治療歴),生活歴(アルコール多飲,低栄養・偏食),家族歴は病因を特定するために最も重要である.

・多くは慢性進行性の経過をとる.急性発症の場合にはギラン・バレー症候群が鑑別上位となる.

・末梢神経伝導検査は神経障害の評価に有用な補助検査であり,主病態が軸索変性か脱髄かを鑑別でき,病因の特定にも有用である.

・神経生検は近年行われることが少なくなったが,アミロイドーシス,血管炎が疑われる場合には適応となる.

・シャルコー・マリー・トゥース病,トランスサイレチン型家族性アミロイドーシスが疑われる場合には遺

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