診療支援
治療

ジフテリア [■2類感染症]
diphtheria
貫井陽子
(京都府立医科大学教授・感染制御・検査医学)

頻度 あまりみない

治療のポイント

・呼吸器ジフテリアは致死率が高いため,早期診断・治療が重要.

・気道閉塞に注意が必要.

◆病態と診断

A病態

ジフテリア毒素を産生するCorynebacterium diphtheriaeによる.

・潜伏期間は2~5日.

・呼吸器ジフテリアは鼻,咽頭粘膜に病変が出現し,症状は発熱,嚥下困難,嗄声など.死亡率は5~10%と高い.

・毒素による心筋炎や神経炎の合併もある.

・重症例では頸部リンパ節が腫脹し周辺組織に炎症が広がるbull-neck appearanceが認められる.

B診断

・保健所に連絡のうえ,偽膜,鼻腔,咽頭から検体を採取し,分離培養・遺伝子検査などで確定診断を行う.

・ジフテリア類似の症状を引き起こす菌としてC. ulceransがあるが,届出の対象ではない.

◆治療方針

 臨床的にジフテリアが疑われる場合,確定診断の前に迅速な抗菌薬・抗毒素による治療が必要.

A抗菌薬治療

Px処方例 下記のいずれかを用いる.

1)エリスロマイシンラクトビオン酸塩(エリスロシン)注 1回10mg/kg 1日4回(1日最大2g) 点滴静注

2)ベンジルペニシリンカリウム(ペニシリンGカリウム)注 1回5万単位/kg 1日6回 点滴静注保外用法・用量

 経口可能な場合は,同等量の経口薬に切り替え,合計治療期間は14日間とする.

Px使い分けのポイント

・エリスロマイシンのほうが臨床効果に優れるという報告がある.

・抗菌薬アレルギーの既往,相互作用,投与回数などを考慮し選択する.

B抗毒素

 アレルギーのリスクがあるため,アドレナリンや抗ヒスタミン薬を準備する.

Px処方例

 乾燥ジフテリアウマ抗毒素:下記の量を数回に分けて筋注(皮下注)または静注,あるいは生理食塩液などで希釈して点滴静注

 軽症:5,000~10,000単位

 中等症:10,000~20,000単位

 重症:20,000~5

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