診療支援
治療

細菌性赤痢 [■3類感染症]
shigellosis
三鴨廣繁
(愛知医科大学大学院教授・臨床感染症学)

頻度 あまりみない

治療のポイント

・少量でも感染が拡大する.

・無症候性保菌者には抗菌薬の投与はより慎重に判断する.

・抗菌薬投与終了後48時間以上経過したのち24時間以上の間隔で連続2回の便培養検査を実施し,陰性であることを確認する.

・止痢薬は使用しない.

◆病態と診断

A病態

・細菌性赤痢はShigella属(赤痢菌)による感染症である.菌種はShigella dysenteriae(血清型A),Shigella flexneri(血清型B),Shigella boydii(血清型C),Shigella sonnei(血清型D)の4種類である.各菌種は型抗原による血清型,S. flexneriは群抗原でさらに亜型に分けられる.

・病変は大腸が主である.

・菌を摂取すると少量で感染が成立する.1~7日間(平均3日間)の潜伏期間を経て典型例では高熱や全身倦怠感,腹痛,水様性下痢,粘血便をきたす.渋り腹がみられる.

B診断

・疑われた場合は,便を採取し,培養を行う.粘液部分からの検出感度が高いとされる.

・微生物学的検査では便検体が有用で,有症状期の便を乾燥しないように採取する.可能であればあらかじめ検査室に疑う微生物を伝えておくとよい.培地は,選択培地であるSS(Salmonella-Shigella)寒天培地を用いると本菌は乳糖非分解細菌のため無色半透明のコロニーを形成する.ただし,S. sonneiではコロニーの中心部が単桃色を帯びる場合があり,疑わしい場合はTSI寒天培地やLIM寒天培地を用いて生化学的性状を確認する.

・典型的な性状の場合は赤痢菌免疫血清を用いて血清型別試験を行う.また同定には自動機器,キット,質量分析装置などがあるが,近縁菌の鑑別が困難な場合は運動性やガス産生などの性状も確認が必須である.

◆治療方針

 脱水症に対して経口補水液(ORS:oral rehydration so

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?