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GLJAID/JSC感染症治療ガイド2019
治療のポイント
・抗菌薬投与は,菌体内のベロ毒素の放出により病態が悪化するとして,否定的な意見がある.発症3日以内の早期であれば,抗菌作用のメリットが毒素放出のデメリットを上回るとされる.
・経過中いずれの時期でも止痢薬は使用しない.
◆病態と診断
A病態
・ベロ毒素産生性の大腸菌による腸管感染症で,代表的な血清型であるO157のほか,O26,O111などがある.ただしこれらの血清型大腸菌のすべてがベロ毒素を産生するわけではない点に注意する.
・溶血性尿毒症症候群(HUS:hemolytic uremic syndrome)を併発すると予後不良になりうる.O157のうち,HUSを併発するのはH7とH-の2種類である.
・脳症による意識障害をきたす場合がある.
B診断
・急に発症する激しい腹痛と水様便で,同様の症状を呈する患者がほかにいれば本症を鑑別診断に加える.
・経口的に腸管に侵入した大腸菌がベロ毒素を産生して発症するため,潜伏期間は3~8日と幅がある.
・糞便検査での大腸菌の分離・同定に加え,ベロ毒素産生能を証明して診断する.
◆治療方針
A抗菌薬
抗菌薬投与を行うか否かの判断が重要となる.消化器症状の出現から4日以上経過している場合は,投与された抗菌薬によって菌体内のベロ毒素が放出され,HUSを誘発することが懸念されるため,抗菌薬投与は行うべきでない.発症早期であっても抗菌薬投与には賛否両論あり,特に欧米では否定的な意見が優勢である.抗菌薬を投与する場合は,発症3日以内の早期に開始する.
Px処方例 下記のいずれかを用いる.
Px使い分けのポイント
・first line:第1選択の抗菌薬