頻度 ときどきみる
◆病態と診断
A病態
・自然界の水系に広く存在するブドウ糖非発酵の好気性グラム陰性桿菌であり,院内では流し場,浴槽,トイレ環境に生息することがある.
・代表的な日和見病原体(健常人に感染を起こすことはまれ)である.
・白血球減少患者,免疫抑制薬投与患者,熱傷患者,挿管・カテーテル留置患者,慢性呼吸器疾患患者などにおいて本菌感染症がみられることが多い.
・近縁菌種としてバークホルデリア(Burkholderia)属,ステノトロホモナス(Stenotrophomonas)属が重要である.
・挿管中の宿主に発症する人工呼吸器関連肺炎の重要な原因菌である.
・白血球減少患者においては,腸管からのバクテリアルトランスロケーションにより敗血症の原因となる.
・熱傷患者においては,皮膚バリアーの欠損により本菌による皮膚軟部組織感染症を合併する頻度が高く,また敗血症などの重篤な病態を合併することが多い.
・尿路カテーテル留置患者においては,コロニゼーション(保菌)としてみられることもあるが,複雑性尿路感染症の原因菌としても重要である.
・慢性閉塞性肺疾患患者においては,ムコイド型の緑膿菌が分離されることがあり,バイオフィルム形成などもあり難治化・慢性化を示しやすい.
B診断
・褥瘡などを除いて本菌が皮膚から分離されることはまれである.したがって,緑膿菌が血液培養から分離された場合には早急に原因菌として治療を開始する.
・慢性閉塞性肺疾患患者や尿路カテーテル留置患者においては,コロニゼーション(保菌)として緑膿菌が分離されることがある.この場合,抗菌薬療法を行うかどうかは,患者状態,検査結果なども参考に総合的に判断する.
・アミノグリコシド系薬,フルオロキノロン系薬,カルバペネム系薬などに同時に耐性を示す菌を多剤耐性緑膿菌(MDRP:multiple drug resistant P. aerugin