診療支援
治療

無芽胞嫌気性菌感染症 [■その他]
non-spore-forming anaerobic bacterial infection
吉田耕一郎
(近畿大学病院教授・安全管理部感染対策室)

頻度 よくみる

治療のポイント

・嫌気性菌感染症を疑うことが重要で,必要に応じ嫌気性菌輸送容器に検体を採取し,検体はすみやかに検査室に運ぶ.

・好気性菌との複数菌感染が多いので,双方に活性を有する抗菌薬を選択する.

・抗菌化学療法のみならず,病巣の切開・排膿,デブリードマン,ドレナージなどの外科的処置を併用する.

◆病態と診断

A病態

・大部分の嫌気性菌感染症はヒトに常在する細菌によって生じる.

・臨床的に感染巣の部位を横隔膜より上か下かで分け,横隔膜より上では口腔内などに常在するPrevotellaFusobacteriumPeptostreptococcusなどが,横隔膜より下では大腸由来のBacteroidesなどが原因菌となることが多い.

・慢性の経過をとることが少なくない.膿瘍を形成し悪臭のある膿を吸引することがある.

B診断

・感染巣から無菌的に採取した検体血液培養で嫌気性菌が分離されれば診断は確定する.

・画像でガス像を認める場合,悪臭のある分泌物を認める場合,病巣から採取した検体のグラム染色で複数種の細菌を認める場合,グラム染色で細菌を認めるにもかかわらず通常の好気培養で菌が分離されない場合などでは臨床的に本症を疑い,嫌気培養を依頼する.

◆治療方針

 抗菌化学療法と感染巣に対する外科的アプローチが治療の基本となる.病巣から直接採取した検体や血液培養のグラム染色所見から想定される原因菌に対して活性を有する抗菌薬を選択する.この際,患者の全身状態や感染症の重症度にも注意し,初期抗菌薬を経験的に選択する.膿瘍を形成している場合は切開・排膿を行う.必要に応じてドレナージ,デブリードマンも施行する.

A感染巣が横隔膜より上の場合(歯性感染症,誤嚥性肺炎など)

Px処方例 下記のいずれかを用いる.

‍ (内服可能例)

1)シタフロキサシン(グレースビット)錠 1回100mg 1日1~2回

‍ (中

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?