診療支援
治療

真性赤血球増加症
polycythemia vera(PV)
杉本由香
(三重大学大学院准教授・血液・腫瘍内科学)

頻度 あまりみない

GL造血器腫瘍診療ガイドライン2023年版

ニュートピックス

・2週間ごとの皮下注射が可能なロペグインターフェロンアルファ-2b(ベスレミ)が新規細胞減少療法薬として製造販売承認された.

治療のポイント

・Ht値45%未満を目指し,血栓症予防を行う.

・治療法は抗血小板療法,瀉血,細胞減少療法からなる.

◆病態と診断

A病態

・98%の真性赤血球増加症患者で造血幹細胞にJAK2 V617F変異が認められ,3系統の血球の自律的増殖が認められる.

・EPO,G-CSF,トロンボポエチン(TPO)各受容体の細胞内ドメインに結合しているJAK2に変異が起きると,その下流のJAK-STATが恒常的に活性化し,典型例では赤血球数のみならず,白血球数や血小板数も増加する.

・血栓症のリスクが増えることが問題となる.

・瘙痒感や肢端紅痛症,頭痛,めまい,視力障害など血管運動症状が出現することもある.

・経過中,二次性骨髄線維症,二次性白血病の発症が起きることがある.

B診断

・WHO分類 第5版の診断基準の大項目には,①Hb値またはHt値の増加(男性Hb>16.5g/dLまたはHt>49%,女性Hb>16.0g/dLまたはHt>48%),②3系統の血球が増加する過形成骨髄,③JAK2 V617FまたはJAK2 exon 12変異の存在,があり,これらすべての大基準を満たすか,最初の2つの大基準に④血清EPO値が正常下限以下という小基準を満たしたときに診断される.

◆治療方針

 治療の目的は血栓症の予防と自覚症状の改善である.後天性フォン・ヴィレブランド症候群(AVWS:acquired von Willebrand syndrome)が併存している際は出血予防も重要である.

A血栓症低リスク群(年齢60歳未満かつ血栓症既往なし)

1.瀉血

 導入時はHt45%未満を目標に,200~400mLの瀉血を月に1~2

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