診療支援
治療

副甲状腺機能低下症
hypoparathyroidism
岡田洋右
(産業医科大学病院診療教授・臨床研究推進センター)

頻度 あまりみない

治療のポイント

・治療は活性型ビタミンD3 製剤の単独経口投与が基本である.

・活性型ビタミンD3 製剤による治療は,低Ca血症の改善による症状消失を目標に行い,少量から開始して血清Ca値(正常下限以下)を目標として投与量を漸増する.

・副甲状腺機能低下症に対して米国では副甲状腺ホルモン(PTH:parathyroid hormone)注射製剤による補充療法が承認されているが,本邦ではいまだ承認されていない.

◆病態と診断

A病態

・副甲状腺機能低下症は,PTHの分泌や作用が低下して低Ca血症や高P血症を呈する疾患である.

PTH分泌が低下する病態は,頸部手術や放射線照射後,22q11.2欠失症候群やCa感知受容体遺伝子の活性型変異による常染色体優性低Ca血症などの原因が明らかなものを続発性,原因不明のものを特発性と分類する.

・PTH作用が低下する病態は,偽性副甲状腺機能低下症である.

低Ca血症に伴うテタニーが主症状で,手足の指の不随意な収縮により両手指がこわばったり,顔が引きつったり,全身がしびれたりといった“てんかん発作”に似た状態がみられるのが特徴である.

B診断

・低Ca血症,高P血症を認め,腎機能の著しい低下や低Mg血症が除外できれば副甲状腺機能低下症と診断できる.

・血中intact PTH濃度が30pg/mL以上であれば偽性副甲状腺機能低下症と考え,確定診断および病型分類のためにヒトPTH(1-34)静注(Ellsworth-Howard)試験を施行することが望ましい.

◆治療方針

 副甲状腺機能低下症の治療としては,いまだPTH製剤が治療に使用できない現状では,活性型ビタミンD3 製剤の単独経口投与を基本として症状改善を目指して治療を行う.長期治療による結石リスクや腎機能低下を防ぐため,血清Caは症状が消失していれば正常下限以下で十分であり,早朝食前の尿中Ca

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